美人ブログ

お待たせいたしました、美人でございます。

買ったけど着たことないビキニがあるからお風呂はいろ♡

 

この世の愛、「買ったけど着たことないビキニがあるからお風呂はいろ」につきるな、と思いながら、この数年、よく、大森靖子の『みっくしゅじゅーちゅ』を聴いている。

 

本当にすごい歌詞だと思う。なんでこの子は、そのビキニを買ったんだろ。そして着なかったんだろ、とよく考える。多分ね、すごいかわいいビキニなんだろうな、目を引くやつ。そして、本人はあんまり似合わないんじゃないかな、と思うような感じなんだろうな。着る勇気がなかったか、タイミングがなかったか、友達がいなかったとか、そういうので着てなかった。私の考えすぎかなぁと思うけど、そういう匂いがする。

 

だけど、お風呂で、この歌詞の相手の前で着たいと思ったんだろうな。それってすごいことだ。かわいい。この人にはこの水着を着た自分を見せたいと思ったんだ。めっちゃいじらしい。かわいい。恥じらいと自信のバランスが絶妙。海辺やビーチなら比較対象がいるけど、ここにはいないから。

 

買ったけど着たことない

ビキニがあるからお風呂はいろ

追い焚きでしばらく

アツアツのままでいよう

大森靖子『みっくしゅじゅーちゅ』

 

急に突飛なことを言うけど、『みっくちゅじゅーちゅ』って資本主義から降りる歌なんだよ。ていうか、尺度から降りて、自分の目の前にある不完全なものを抱きしめることにした人たちの歌だから。永遠に勝つことはできないし、そもそも勝つことだって、難しい。そこじゃない世界で、どうやって、幸せになるかって、結果、それをわかった上で、届かないものも分かった上で、幸せになるってことなんだろうな、と思う。

 

全然、相手だって完璧じゃないし、ゾッコンだけど、ゾッコンじゃない。

 

竜剣(ドラゴンソード)のダサいネックレス

でも君は最強の武器だ

大森靖子『みっくしゅじゅーちゅ』

 

全然ダサいんだよ。買ったけど着たことないビキニと、竜剣のダサいネックレスなんだよな。なんか、竜剣のネックレスをつけてる人、すごく弱虫っぽいな。それがないと自分守れないんだろうか。かわいらしいと思う。私はやっぱりなんか、少し世界に負けそうになってる人たちが好きだ。それがたとえ、外側の尺度と違ってもいい。それでも幸せになるって、たくましさだと思う。我々は誰でも何かからはこぼれ落ちてるんじゃないかと思う。完璧みたいなものから外れたところに愛がある気がしてならない。

 

食べログ評価の低い味でも

美味しい思いしようよ

大森靖子『みっくしゅじゅーちゅ』

 

食べログを見て確実な店を予約なければいけないタイミングが、今、皆さんの人生にも訪れているかもしれない。実際、全然よくないの店を予約されても困るんだけどさ。でも、それだけじゃないでしょ?って思う。

 

以前飲食で働いてた時に、知ったことだけど一定時期が経つと食べログ評価が変動することがある。その、3.◯以上か以下か、みたいなのがすごく大事で、それを下回ると途端に接待用の店に選ばれなくなるらしい。人が接待で選んでる店なんてその0.5とかの違いなのよ。味なんて変わんねーのにな。0.5下がるまでと。

 

だからこそ、食べログ評価の低い味でもって、ほんと、たまらんよな。多分自分たちのことなんだよな。大森靖子、ずっと弱者のことを歌っている、少し足りない人たちのことを歌っている。だから好きだ。食べログなんかに何を美味しいと思うか決められてたまるかよな。そう、食べログ評価の低い私たちが幸せになる方法を探して、アツアツのお風呂で追い焚きになりたいんだよな。

 

そういえばこの前友達と、姫路に旅行に行って、姫路城まで連れてってもらったけど、「美人さん神戸で大丸(百貨店)に爆上がりしてたけど、姫路城の写真そんなに撮ってなかったね。」と言われた。スマホの電源が少なかったのはあるけど、姫路城は、彼女が撮った方が上手だし、ググれば出てくるから。(ちなみに大丸は、私の好きな漫画『繕い裁つ人』に出てきた百貨店のモチーフだから、テンションが上がっていた。)

 

でも、それより嬉しかったのは、彼女が学生時代勉強していたという、ドトールでお茶したことだ。私は「自分の大事なことをするときはドトールでやる」という謎のジンクスがあり、その話をしたら、なんか、しれっと帰り際に連れてってくれた。ずっと飲みたかったほうじ茶ラテを飲み、別に都内のどこのドトールとも変わんないんだけど。その、変わらなさが良かった。このチェーンのドトールが他のドトールと違う理由は、彼女が学生時代勉強するのに時々使っていた、ということに過ぎない。まだ私と出会う前の、知らないその人がそこにいることがおもしろい。あと、赤本や参考書を買ったと言う、本屋にも行った。これも良かった。

 

多分ね、私はその他の人にとっては何ひとつ特別ではないものが特別になる瞬間について、なんかすごく、晴れがましい気持ちになる。支配欲って言われたら否定しないけど、別にそんなに悪いもんでもないでしょって思うよ。大事なものを大事認定していくのは私が何が資本か決めることだからな。姫路城はユネスコが見つけてるからなぁ。ユネスコが見つけてなくて、私たちが見つけないとなくなってしまいそうなものが好き。

 

「買ったけど着たことないビキニがあるからお風呂はいろ」は、

「あなたが勉強してた地元のローカルチェーンのカフェに行こ」

だ。

 

年末デパ地下で、旅行に行った友人とはまた別の友人たちと買い出しをしてた時に、その子の亡くなったお母さんがすごく好きだったパン屋さんのパンを買って食べた。全然特別なパンではなくて、お店のラインナップの中でも定番だがかなり手頃な値段の商品だ。レジで会計をする時に彼女が「あ!今美人ちゃんと、〇〇と、パン買ったよってかぁちゃんに言いたい!」と言ってたのがなんだかものすごい嬉しかった。すごい「勝ち」を感じたんだよな。そこにいない人が好きだったパンを買って、それでもいないその人に伝えたいと言葉にすることそのものに、勝利を感じた。言うことはできないが、「言いたい!」と思える、そしてそれを言葉にできる。もういない人が好きだった、普通だけど特別なパンを私が食べることに、思い出というものの力を感じた。

 

「お母さんが好きだったDONQのコーンパン一緒に食べよ」

「買ったけど着たことないビキニがあるからお風呂はいろ」

 なんだと思う。私にとっては。

 

他の人にとっては、全然特別ではないものがその関係性の中でだけ光を浴びるもの、が好きだ。まあ、「買ったけど着たことないビキニがあるからお風呂はいろ」は、恥じらいがあるからちょっとエロいよな。今まで誰にも見せてこなかったものを人が見せる時にドキドキすると思う。いじらしさは可愛らしさだと思う。

 

このブログは基本的にそういうものなので。それが外界からどれほどくだらないものでも、自分にとっての愛とか、美とか、おもしろさとか、かけがえのなさってこれだから。

 

追い焚きでしばらく アツアツのままでいよう♡

浴室分でいい。バスタブひとつでいいから、読んでる人と私が無二になれる場所が欲しい。のぼせたらいつだって外に出られるんだから。外では着られないビキニを着ようと思って、お風呂を沸かす時間は、もっともっとあってもいいんじゃないかと思う。コンプレックスまみれでしょ、みんな。

 

二個一つのだっさいネックレスでも

ねえ美味しい思いしようよ

美味しい思いしようよ

大森靖子『みっくしゅじゅーちゅ』

 

だっさくてもしあわせならいいじゃんね。