美人ブログ

お待たせいたしました、美人でございます。

悪い人ではないが、いちばん愛せる距離のまま

私に声を荒げた男の人は、ほとんどいない。いつも優しい男の子たちに囲まれてきた。女の子たちにも囲まれてきた。困った時は助けたり、手伝ったりしてくれるし、いつも自分以外の他者のことを思い遣ってくれている人たちだった。

 

それが当たり前だった。周りの人が喜んでくれるかどうかとか、後輩の私が大変じゃないかとか、考えてくれる人ばかりだった。大勢でやったイベントの片付けは最後まで手伝ってくれた。帰り際タクシーに皿やお鍋を積み込むところまでやってくれた。大好きな人たちがいて、それがずっと当たり前だった。私が前で踊ってたら、先輩が洗い物をしてくれて、「は!ごめんなさい中に戻ります!」と言ったら「人には適材適所があるから!」と叫んでくれた。なんでそんななの?なんでそんなに優しくしてくれるの?と思ったことを思い出す。それは、格好をつけたいとか、女性にいい顔を見せたいとか、いろんな見栄もその中にはあるかもしれないけど、それでもやっぱりその行動の1番の軸には、誰かのために、があった。

 

みんなでいるときに、最初に排水溝の掃除に手をつける人のことを私は見ている。バイト先とかで大掃除するときに、最初に換気扇に手をつける人のことを、私は見ている。その場で1番うまくいかない誰かのことを気にかけている人のことを見ている。自分のことは後回しでいいとテキパキ動いて、みんなが楽しければいいと、満ち足りた顔で言う人たちを知っている。それが私の思う、頼りになる格好のいい人たち、だ。

 

あとは、この前飲み会の時、先輩の実家に招いてもらって、夜中にプッタネスカをささっとつくってもらったのもうれしかった。

高円寺でベロベロになって号泣しちゃった時、お家に連れ帰ってヤクルトを私に飲ませてくれて、ネックレスを外して、パジャマ貸してくれた先輩のことも思い出す。

 

5〜6年前初めてお料理とお酒を振る舞うイベントをやった時、シャンパンを持ってきてくれた先輩たちがいて、それが嬉しかった。去年当時集まっていたメンバーで再会したときに、それがどれほど嬉しかったか話したら、「いや、GACKTの真似したかっただけだから…」と照れながら笑っていた。別にそれほど格好のつくセリフではないんだけど、でも、その素直さが愛らしくて素敵で、こそばゆいほど嬉しい気持ちになる。そんな先輩たちが大切だった。

 

これは何度か遭遇して酷い目にあったから、もう認めていこうと思うんだけど、卑屈で、鬱屈としてる男の人に関わると、あんまりいいことがない。コンプレックスのパンドラの箱は、人をあっという間に魔物に変えるし、近くにいる他者に恨みが向くことがあると思う。

 

先日、カウンターに一緒に立った人と揉めてしまった。始終コンプレックスの匂いがぷんぷんして、その解決を私に覆い被さって、なんとかなろうという気配が満々だった。

 

今回はお酒とお菓子を出す程度の催しだったが、イベント前のランチ中に、彼から、自分がいつかライブイベントを開催して、自分の応援しているバンドを呼びたいとか、有名なインフルエンサーの女の子を招いてみたい、という相談を受けて(以前からずっと受けていた)げっそりして、口論になった。私は司会をやってくれとか、企画を手伝ってくれたとか言われていたが、沈みそうな船に好き好んで乗る者はいない。その船がとても大事な船で一生懸命ひたむきに守っている人がいれば人は集まってくるが、エゴでできた船に乗るほど皆暇ではない。私はお人好しなので、沈みそうな船の船長に声かけて一緒にボートで避難しましょうとは言うけど、「逃げるくらいなら俺は俺の夢と共にこの船の中で死ぬ!」みたいなことになるから、基本的に怒られが発生する。男の夢、ゆるすぎる時がある。

 

で、今回、大きな催しをやる前にカウンターに立ちませんか?と言う話になったのは、私なりの避難ボートだったわけだ。彼は地元でも企画に携わったイベントで人と揉めたりして、精神的に病んだりしてたのでなんだか彼の好きなことで助け舟を出せたらいいのにと思ったのだ。でも、最後まで面倒を見れないことには手を出すべきではない。

 

大きなイベントは、今回のイベントが成功してからにしませんか?と言ったけど、なんというか俺の夢と俺のエゴは止まらないみたい。私はいう。

 

「そのイベント、1番楽しいのあなたじゃないですか。お客さんの姿や視点が見えないんですけど…。私そういうイベントは手伝わないことにしてるんです。」

 

「演者が楽しくて何が悪い!って僕は思うけどね。客として行った時いつも思う。」

 

「うーん…でも、好きなバンド集めて好きな女の子集めて、あなたが一番楽しいって明らかにわかるイベントにお金払う人いないと思います。とにかく嫌です。」

 

客より自分の欲でいっぱいだった。人と人を繋ぎたいとか、応援したいと言ってるけど、自分がイベントの中心になって、自分よりちょっと華やかな世界に入ってみたいというのが痛いほどにわかる。それは自分の中にもある感情だからわかるんだと思うけど。コンプレックスまみれで、自分もこんなんじゃないのにって思うけど、自信がなくてにっちもさっちもいかない。いちいち大仰で面倒くさい。

 

彼の行動原理には、その私たちの共通の趣味(私は別にそれほど趣味という認識もない。)の人たちが1年前にライブハウスでやったイベントへのコンプレックスがあった。テレビ業界で仕事をしているという、ある男の子が中心になってやった企画で、確かに少し内輪ノリ的な雰囲気やサムさもあったけど、私たちと似た感性を持っている人であれば、きっと、ある種の憧れを集めるに足るものだった。華やかな衣装や、映像配信や、ライブや、司会、やりたいことが形になっているようなイベントがあった。彼はそれへのコンプレックスをこじらせていた「俺だって、オレだって、俺だって」、まあ自覚してないみたいだけど見え見え。もう見え見えで引いてしまう。腹が立って耐えられない。

 

私はつい、切り込んでしまった。

 

「あのね!もう言うね!羨ましいって思ったんでしょ!自分がずっと昔から好きだったことで、他の子達が集まって、テレビ業界の彼が中心になって、自分もこんなことできたらなって思ったんでしょ。たしかにサムいところも内輪ノリもあったと思う、自分だったらもう少し…って思ったと思う。私の中にもあれをみた時そういう感情は湧いたよ!だけどそれは、それは嫉妬!!いいな、楽しそうだなって思った、そういう気持ち、私の中にはあったけど、あなたの中にはなかった?そこに追いつきたいという気持ちが透けて見えて透けて見えてしょうがなくて嫌になる!!!!ねぇ、格好いい、楽しそう、うらやましいとと思ったんでしょ?なりたいと思ったんでしょ?自分にだってできるって思ったんでしょそれに焦ってるでしょ!!!!それに付き合わさないで!!」

 

言ってしまった。もう手に取るようにわかる。その男の人は絶叫した。

 

「そうだよ!!あいつらは東京ディズニーランドだけど、俺がやったらナガシマスパーランドじゃ!!!!!」

 

文面にすると失笑だけど、言い方に棘があると、あー、、、コンプレックスの箱が開いたときの刺々しい感情だ、と思ってそれを浴びるとげっそりする。まあ私から好き好んで分け入った場所ですが。ナガシマスパーランドナガシマスパーランド…とぶつぶつ言っていた。

 

ナガシマスパーランドだってできるかわかんないですけどね」(あなたのエゴや支配欲、性欲が先行するなら)

 

と、私は言った。彼は、自分が二流、ひょっとしたら三流の立ち位置なことをよくわかっている。わかっていて、わかっていて、どうにもいたたまれないのなら自己実現のために周りを突き合わせるなよ!それを素直に認めた先にある面白さが絶対にあると思う。自分を甘やかすなよ!頭の中には初期大森靖子のマジックミラーがかかっていた。反逆側の面白さ、少し自分を足りないと思ってる側から放たれるギリギリの舞に人は惹きつけられる時がある。ナガシマスパーランドには、なばなの里っていう日本屈指のイルミネーションがあるけど、あなたは何を用意できるの?と思う。

 

みんな一生懸命やっている。私だって料理が得意なわけではない。学生時代、スナックのイベントで料理を振る舞っていた頃は、業務用スーパーで買ってきた牛すじを煮こぼしして臭みをとって下処理して、煮込みを作って何度も練習した。イベントやっても赤字になるくらい準備した。シンクがドロドロになったり、それを掃除したりするの。最初は普通のお鍋で作ってたんだけど、途中から圧力鍋を使うようになったの。

できることを一個一個増やしていったの。昔、鶏めしを食べて「美人さん、これ、すごく美味しい!」と大学時代の友人が言ってくれたときに、それを思い出すだけでほころぶようなきもちになった。思い出すたびに、まだ生きてたいなと思える幸せな時間がある。そういうことで誰かが喜んでくれて私が嬉しい時間をちょっとずつ積み重ねたかった。どんな人にも価値があって、みんなを待ってたくて、そんな場所でちゃんと旗を揚げられたら🚩と思っていた。なのにこんなにうまくいかないなんて思わなかった。

 

そのあと彼はカウンターに立っても、ずっとプリプリとしており、(まあ、私が彼のテンションを落としたのが悪いが)お客様に「どうせ興味もないのに来てくれて…」とか、卑屈な感情を撒き散らしたり。そのくせ、ほとんど私のお客さまなのに、地方からやってきた自分に会いに来たと勘違いして「こんな若造のために」とか言って、滑ったりしている。

 

場が沈むので私がきりきり舞いのマシンガントークをしたら、「さっきから喋らせる隙与えないじゃん!!!」と激昂して怒鳴ったり、自分のオタク話だけ披露したり、なんか私がいうたびに隣で絶叫キレムーブ(自分の尊厳がギリギリの男がするモラハラプレイ)なので、げっそりしてしまった。新婚のカップルが入籍後に来てくれたのに、持って帰るのが大変なとても大きいプレゼントを、彼らが来店して扉が開いてすぐ押し付けようとしたり──それは、「みんなの前で俺がこんなのをあげたんだ!」って見せたい気持ちが先行してるし、入籍当日はディナーに行ったりいろいろご予定もあるだろうから、宅配便で送ってあげてと私と女友達が言ってるのに、ちょっと渋られたり。壊滅的に想像力がない。

 

後半はもうずっと自分の友達のところで座ってて、自分の好きな音楽をかけて自分の好きな話だけしている。こんな人は初めて見た。オナニーがすぎる。

女友達が途中からヘルプに来てくれて、私がまるで「制裁」のように彼のことをガン無視している様子を気に留めて、彼にささやかな指示を出したり、「これをやってくれるかな?」と優しく介護し始めてくれた。するとその男が、「わーい!〇〇ちゃんは僕のお母さんだー!」と言っていた。ドン引きした。私こんなに気持ちの悪いことを言う男の子と大学時代会ったことないから。私たちより年齢も7〜8上だよ?私がしばしば期待しすぎ、と言われることがよくわかった。心が満たされたエリートの人たちと弛むことが多すぎた。「お母さんだ」ってキモい。性すぎる。黙れよ。今日はお前のおもりじゃなくてお客様をもてなすために来てくれてるの!

 

あなたが気持ち良くなるために、場があるなら、銀座で女の子並べてカラオケしてな。自分が気持ち良くなるためには一晩で何十万か、かかるけど、わかる?と思うのだった。二次会は勝手に行ってもらって、昔のポルノ映画の上映会にその女友達と一緒に行った。楽しかった。心身ともに回復した。

 

そのあと、女友達に事の顛末を話した。

ナガシマスパーランド、私は好きだけどなあ」と言ったあと、

「あのね、彼が本気で頑張ってもね、その領域までいけないってことが本当はよくわかってるんだと思うの。」

とか

「たとえネガティヴなことでも、自分のことについて他人が話してくれてるって嬉しいから、美人ちゃんがそこまでの踏み込み方をそこまで興味のない人にしちゃうと危ないのよ!」

とか

「彼、自分が嫌いだから、カウンターに立ってる自分に耐えられないんだと思うな」

とか言われて深く納得した。

これは私の人生においてこの先触れなくていいものかもしれない。

 

そうか、と思う。自分の隣に立ってくれた人たちを思い出す。彼らはいつもお客様優先だった。イベントの前に友人のおうちに呼び出されて当日出すお料理を準備してくれて食べさせてもらった時のこと。DJを練習していて一生懸命リミックスをしてくれて、お客様にカレーも作ってくれて、イベント終わったあと今まではパソコンのソフト使ってたんだけど、DJ機材買ったんだー!って報告してくれたこと。私のやりたいことのためにいろいろ手伝ってくれた人たち。一緒に楽しんでくれた人たち。思い出しては愛しくなる。当たり前ではない。私はどんな人でもカウンターに一緒に立てば、うまくいくと思ってたのに。

 

家に帰ってたくさんのことを思い出した。「友達のために鍋を作りたい」と学生時代よく言ってお鍋を振舞ってくれていた男の子と、この前イベントやったけど40人分の鍋、しっかりつくり終えて群馬まで帰ってくれたな。「友達のために鍋作りたい」って尊い感情だ…。と、体育座りをしながら考えた。

以前私の店で一緒にカウンターに立ってくれた男の子も「最後のお客様まで見送れなくてごめん!」と言いながら帰って行った。

 

どれだけ恵まれていたかをつい忘れてしまう。誰とでもうまくいくわけではない。悪い人ではないが、もういい、というのはあるのかもしれないな。

少なくとも距離の話であって、彼は私のお客さまだったが、一緒に何かをする相手ではなかった、というだけだ。互いに傷つかないその距離をもう見誤らないようにしたい。

 

兎にも角にも私に声を荒げる男は絶対に許さない。プライドの問題は自分で解決してほしい。